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3000 Miles to Graceland スコーピオン

アメリカ映画 (2001)

デイヴィッド・ケイ(David Kaye)が、全体を通して重要な脇役として登場するクライムサスペンス(冒頭のクレジットでは、最後にandで登場する)。ケヴィン・コスナーが初の本格的な悪漢に挑戦した映画。共同主演はカート・ラッセルとコートニー・コックス。ラスベガスのカジノから大胆かつ荒っぽい方法で320万ドルを盗んだ窃盗団の「その後」を描いたもので、そこに、デイヴィッド・ケイ扮するジェスと、その母シビルが微妙に絡み、物語は二転三転する。ジェスは、カジノでの強奪シーンを除くほとんどの部分に「ちょっと」ではあるが出演し、物語の行方を左右するキーパーソンの1人になっている。しかし、映画の焦点は、主役の3人に注がれているので、デイヴィッド・ケイに注目する人は少ない。

出所したばかりのマイケル(カート・ラッセル)が、マーフィー(ケヴィン・コスナー)に呼ばれてカジノの襲撃に参加すべく、「第1逃亡先」となるラスベガス北方の人口63人のローズウッドにあるモーテル「Last Chance」を訪れる(架空の町だが、ラスベガスから北に伸びる国道93号、もしくは、その先の州道318号沿いだろう)。砂漠に近い乾燥地帯を通る道路なので、モーテルの名前「Last Chance」は、この宿を逃すと100キロくらいは何もないという意味か? マイケルの車は、年代物の真っ赤なキャデラックのクーペ。最初に、モーテルを管理するシビルとジェスの母子との運命的な出会いが描かれる。発端は、ジェスによるキャデラックの髑髏型をしたバルブキャップの盗難。この子、手癖がすごく悪い。母とマイケルがベッドでよろしくやっている間に、部屋忍び込んで財布を盗み、おもちゃのカウボーイ・セットを買う。その時のカウボーイ・ハットと二丁拳銃を映画の最後までずっと持っている。また、この子は、大事なものをすぐに天井の点検口に隠す。この2つは、後で何度も登場する。その後、マーフィーとその手下3人が合流、計5人でカジノを襲撃する。ちょうど、カジノのホテルでは国際エルビス大会が行われていて、強盗団もプレスリーのステージ衣装をまとっている。現金を強奪し、ヘリでホテルを脱出後、モーテルの1部屋で金勘定を始める。たまたま、その部屋にはジェスがカウボーイごっこで隠れていた。4人は、警官に射殺された仲間1人の取り分の配分を巡ってもめ、マーフィーが1人を射殺、全員で死体を隠しに行く。映画では描かれていないが、その間に、ジェス母子が天井の点検口に強盗団が隠した320万ドル入りバッグを盗む。100ドル札と50ドル札ばかりと言っているので、5万枚として重さは50キロ。ジェス一人で天井から降ろし、自分の部屋まで運んでいき、その部屋の天井の点検口に上げることなどできない。だから、この時点から母が積極的に関与している。さて、死体を隠しに行った場所で、マーフィーは残る2人を撃つ。しかし、モーテルに戻る途中でコヨーテをはね、車は道路脇の穴に突っ込んでマーフィーは気絶。一方、撃たれたマイケルは防弾チョッキを着ていたので無事。いち早くモーテルに戻り、母子が隠した320万ドルを見つけ出て行こうとするが、やむをえない展開で母シビルの車でジェスも連れてでかけることに。その後は、マイケルとマーフィーの騙し合いが続き、最後は、エルヴィス・プレスリーの生家のあるグレースランドから3000マイル離れたカナダ国境の町、ワシントン州マウント・ヴァーノン(映画の原題「3000 Miles to Graceland」の由来)でジェスを人質に、警察を巻き込んだ一大戦がくり広げられる。その年の最低映画を選ぶラジー(Razzie)賞に5部門もノミネートされただけあり、観ていて分かりにくい展開になっている。

デイヴィッド・ケイは、典型的なハンサムボーイだが、表情が画一的で「名子役」とは言えない。出演歴のほとんどは、TVドラマを除けば、TV映画ばかり。しかも、主演作はゼロ。代表作はこの映画のみ。


あらすじ

寂れたモーテルの前に、赤いキャデラックで乗り付けたマイケル。降りて管理棟に向かう。さっそく近づいてきたのが管理人の息子ジェス。「かっこいい」と車を撫でる。その直後、近くにいたサソリを「可愛い」と言って持ち上げ、ビンに入れる(1枚目の写真)。あらすじとは関係ないが、映画の日本語題名が「スコーピオン(サソリ)」なので、写真を載せることにした。ジェスは、最後に、「いただき」と言って、髑髏型のバルブキャップを1個頂戴する。それをマイケルに見つかると、足を蹴って逃げる。如何にも悪ガキだ。逃げる途中で、母に「何してるの?」と捕まる。「あんたの子か? 俺の59年型キャディーから、バルブキャップを外した」。「ほんとなの?」(2枚目の写真)。母は、ジェスが持っていたキャップを取り上げ、「車から盗んじゃダメって、何度言わせるつもり」と尻を蹴飛ばす。これが、母シビルとマイケルの出会いとなる。
  
  

マイケルを一目で気に入ったシビルは、「コーヒー飲まない?」「お金ある?」と唯一の簡易食堂に誘う。ひっついて入って来たジェスが、「ママ、コーラ飲んでいい?」と、まとわりつくように言いかけたので(1枚目の写真)、母は、「話し中、邪魔しないの」と諌める。ジェス:「でも、僕だって…」。母:「財布持ってないの」。それを聞いたマイケルが、「おい、ちょっと待て」と言い、「好きなもの飲むといい」と5ドル札を渡す。「わあ、5ドル。ありがと、おじさん」と言い、カウンターに行って、前から欲しかった「アリゾナ・カウボーイ」のセットを見せてもらう。「特価品、19.99ドル」と書いてある。「5ドルじゃだめ?」(2枚目の写真)。あまりに差がありすぎるので、こんな場所柄で買い手はいないと思うが、断られる。その後、シビルはマイケルをベッドに誘い、次のシーンでは激しいセックスの真っ最中。そこに、床を這って侵入するジェス。母親の性行為にも全く慣れた様子が怖い。マイケルの財布の中身を確かめ(3枚目の写真)、財布ごと頂戴する。ジェスの後ろの鏡には、ベッド・シーンの一部が写っている。ジェスはさっそく店に戻り、カウボーイ・セットをゲットする。
  
  
  

マーフィーが、3人の仲間を乗せてモーテルに到着。一番端の部屋の前に停める。クラクションの音で、姿を見せるマイケル。2人が会うのは久しぶり。マイケルが5年半の「お勤め」を終えて出所したばかりだからだ。2人の背後では、ジェスがカウボーイ・ハットをかぶり、2丁拳銃をくるくる回して悦にいっている。それを見たマーフィーが「誰のガキだ?」と訊く。「さあな」。「お前を知ってた見たいだぞ」(1枚目の写真、背後に拳銃を構えたジェスが映っている)。「銃を持ってる(packing heat)からといって、俺のダチじゃない」。ジェスは、自分の方をチラチラ見るマーフィーを、睨み付けるように見る(2枚目の写真)。5人は一旦は出かけるが、後で、財布がなくなったことに気付いたマイケルが1人で戻ってきてシビルの部屋を訪れる。その姿を見たジェスは、自分の部屋に逃げ込む。いつものことなので、母は、部屋の真ん中にある天井の点検口を探し、中から隠してあった財布を取り出してマイケルに返す。幸い損失は、カウボーイ・セット代の20ドルのみ。
  
  

次が、5人組によるカジノ襲撃シーン。当然、デイヴィッド・ケイは出てこないが、映画の要なので、簡単に紹介しておこう。国際エルビス大会に合わせて、5人全員がエルヴィスのスタイルで決めて入場(1枚目の写真)。No.2のマイケルだけは、そこから別行動を取り、エレベーターの乗客が降りて1人になると、停止させ、エレベーターを自由に動かせるように細工する(2枚目の写真)。残りの4人は、金庫室に侵入し、マシンガンで脅して100ドル札と50ドル札のすべてを奪い(3枚目の写真)、そのままカジノに入り、警備員と派手な撃ち合いになる(4枚目の写真)。そして、マイケルが間に合うように到着したエレベーターに乗り屋上へ。そこには、6番目の相棒がヘリで迎えにきて、屋上まで追ってきた警官隊と応戦しながら空中へと逃げる(5枚目の写真)。これでは、追跡のしようがない。5人組のうち1人が警官に撃ち殺されので、途中でヘリから投げ捨てる〔下は砂漠のような場所なので、見つかる恐れはない〕。
  
  
  
  
  

一方、マーフィーが借りておいたモーテルの部屋では、カウボーイの姿のままマスター・キーで侵入したジェスが、そこで見つけたカッコいい帽子(1枚目の写真)を被り、自分の姿を鏡に映して満足している。そして、洗面に入り、如何にも大人になったつもりで、顔に泡を塗りたくって髭剃りの真似ごとをしている(2枚目の写真)。その最中に、車のドアが閉まる音がしたので、慌てて照明を消して洗面に立てこもる。
  
  

部屋に、現金入りの大きなバッグを運び込んだ一行は、テーブルの上に札束をぶちまけ、それぞれの取り分の山を作り始める。そこで問題が起きたのは、マーフィーが、死んだ仲間1人の分の分け前を、「俺のヤマ(deal)だ」と言って、自分のものにしようとしたこと。それに対し、クリスチャン・スレーター扮する生意気な若者が猛反発(1枚目の写真)。激しい口論をドアの隙間から盗み見るジェス(2枚目の写真)。最後に、マーフィーはテーブルの下から1発脚を撃ち、相手が倒れたところで、「銃(nickel plating)を持ってる者が ルールを決める」(3枚目の写真)と言って撃ち殺す。そして、札束をバッグに戻し、天井の点検口の中に隠し、全員で死体の処理に車で出かける。前にも書いたが、映画では描かれていないが、その間に、①ジェスが母に相談に行き、②2人で天井からバッグを降ろし、③自分たちの部屋の天井の点検口に隠し直した。死体の処理に同行したマイケルと若い男は、マーフィーのだまし討ちに遭い、銃で撃たれる。しかし、現金を取りに戻る途中、マーフィーはコヨーテにぶつかったあおりで、道路脇の穴に突っ込んで気絶。一方、防弾チョッキを身につけていたマイケルは、一時気絶していたが、すぐに気がつき、ヒッチハイクでモーテルまで戻る。しかし、天井の点検口にはバッグはなかった。普通なら、マーフィーが持ち去ったとあきらめるところだが、ジェスのカウボーイ・ハットがイスに置いてあるのを見て、1+1=2で、ジェスが盗んだと確信し、シビルの部屋に向かう。
  
  
  

シビルとジェスは、ソファに座ってTVを見ている。当然、見ているのはカジノでの盗難のニュース(1枚目の写真)。そこに、カウボーイ・ハットを手にしたマイケルが入ってきて、「ジェシーはどこだ?」と訊く。慌てて自分の部屋に逃げ込むジェス。大金がかかっているので、マイケルはジェスの部屋に踏み込み、窓から逃げようとするジェスを捕まえると、「金はどこだ?」と問い詰める。「何のこと言ってんだよ」(2枚目の写真)。それを見て、母が警察に電話をかける。交換手が出たところで、マイケルが天井の点検口からバッグを降ろしてみせた(3枚目の写真)ので、電話を切る。ここが一番理解できない。なぜ、いきなり警察に電話したのか? 自分も大金入りのバッグを天井に隠したことで重罪を犯しているのに〔バッグの中身が何かはジェスから聞くか、直接見るかしているハズ〕。結局、①警察に電話する→②近くにいたパトカーが来る→③それをきっかけに3人で出かける、というストーリー展開にするため、脚本を捻じ曲げたとしか思えない。そういえば、ラジー賞ノミネート5部門のうち1つは脚本部門だった
  
  
  

マイケルは銃を取り出し、母子を座らせると、バッグから札束を取り出し、「ここに10万ドルある。黙っててくれれば、君のものだ」と持ちかける。それで了解がつき、部屋を出たところで、自分の車がないことに気付く〔マーフィーが乗って行った〕。そこで、目の前に停めてあるシビルのボロ車に目を留め、もう一度部屋に戻る。マイケルは、シビルに車をよこせと言うが〔10万ドル渡してあるので、もらう権利があると思っている〕、きっぱり断られる。母とのやり取りを面白そうにみつめるジェス(1枚目の写真)。母の条件は、「一緒に連れてって」というものだった。マイケルは当然No。「3秒やるからキーを渡せ、さもないと、壁にチェリー・パイ(血のこと)が飛び散るぞ」。その時、ドアにノックの音が。近くにいたパトカーが、先ほどの警察への電話(911)を受けてチェックに来たのだ。一番頭の回転の早いジェスが、「ママ、お金」と言い、母が持っていた札束を受け取る。そして、マイケルに「座って」と指示する。戸惑っているマイケルを座らせ、札束を隠し、カウボーイ・ハットをかぶらせ、「ママ、ドア開けて」と矢継ぎ早に命令。部屋に入ってきた警官が見たのは、仲良さそうにソファに座る父子風の2人(2枚目の写真)だった。この時のデイヴィッド・ケイが一番ハンサム。結局、母が「411」(番号案内)にかけるつもりで「911」にかけてしまったと言って謝り事態は収拾。母は、今から3人で出かけるからと、置いてあったバッグを警官に車まで運んでもらう。こうなっては、マイケルも3人で車に乗らざるをえない(3枚目の写真)。かくして3人は出発するが、しばらくして、マーフィーがモーテルに戻ってきて、天井の点検口に隠したバッグがなくなっているのに気付く。この段階で、マーフィーには、誰が盗んだか全く見当がついてない。なのに、なぜか、盗んだ金の「洗浄屋」に向かう。彼は、後の言動から、マイケルが死んだと確信している。従って、第三者が盗んだことになり、その場合は、「洗浄」などしないか、しても、別の「洗浄屋」に行くハズだ。唯一の可能性は、実際に映画で起こるように、「洗浄屋」を脅して金庫から直接きれいなお金を盗むこと。これなら、カジノから奪った「使えないお金」は要らない。しかし、映画を観ていて、そこまで深読みすることは困難なので、脚本に問題があるとしか思えない。
  
  
  

「洗浄屋」のいるアイダホ州ツイン・フォールズ(Twin Falls)に向けてひた走る車中で。マイケルがシビルに「どうやって、金をあそこに上げた?」と訊く。「ジェシーよ」。「ちょいと重過ぎると思わんか?」。「被害妄想じゃないの?」〔母親も息子以上にワルだ〕。「お前さんが、盗もうとしたんだろ?」(1枚目の写真)。利口ぶるシビルに対し、マイケルは、カジノから盗んだ金にはすべて印がつけてあり、そのまま使えばすぐにバレて警察に捕まると話す。ということは、昨夜シビルに渡した10万ドルは、バレることが前提だったことになる。しかし、バレれば、自分の身元も割れてしまうと考えなかったのだろうか?〔脚本の穴〕。とにかく、このことは、素人のシビルにとっては意外な衝撃だった。さっそく方針を改め、「私たち、どこでお金を きれいにできるの?」と探りを入れる。主語が「あなた」でなく「私たち」になっているところが怖い。「洗浄人のことは心配するな」。「合い言葉は何?」。「何だと?」。「洗浄人よ。一度も会ったことないんでしょ?」。「だから?」。「合言葉がなきゃ。警官じゃないって安心させないと」。結局、マイルズは、「紙に書いてある」と言うが、そんなこと打ち明けるだろうか? 一方、ツイン・フォールズに向かって赤いキャデラックを飛ばすマーフィー。途中でガソリン・スタンドに寄り、意味もなく店主を殺し、意味もなく店をガソリンで吹き飛ばす(2枚目の写真)。こんなことをすれば、警察に居場所を教えるようなものなので、単なる「映画を派手に見せるための演出」に過ぎない。そこで拾った店主の娘が、いつの間にかいなくなることも不明瞭だ。
  
  

夜中走って朝になり、途中の町で朝食を取る。車を降りる時、母がジェスに向かって「ジェシー、言ったこと忘れないで」と言い、ジェスが「分かってる」と受ける。昨晩、運転ができなくなるほど眠くなったマイケルが仮眠をとっている間に、2人で綿密な計画を練ったのであろう。食事中、母がジェスに、「ちょっとズレて、ママを出して」と言ってトイレに行く。その間に、ジェスが「ママのこと好き? ママはあんたに惚れてる、絶対だ」。「ああ、楽しいコンビ(a couple of coconuts)だな」。「ママは、あのウエイトレスに妬いてる。おっぱい大きいから。大きなおっぱい好き?」。母子の言動に危険を察知したマイケルが、トイレを見に行くと、シビルがドアをわざと少し開けて化粧をしている。それを見て安心して席に戻ったマイケル。シビルはそれを確認して、次の行動に出る〔映画には写らない〕。一方のジェス、マイケルが席に戻ると、「申し分なし(copacetic)?」と訊く。「大げさな言い方だな。ポテト残すな」。「知っことか。父親面するな」(1枚目の写真)。ジェスは、マイケルにいろいろと話しかけて、母の帰りの遅いことを誤魔化す。最後は、「カジノをヤッたのは何回?」〔ヤッた=強盗〕。「1回」。「1回だけ? それってダサすぎない?」。その時、テーブルにウエイトレスが2人やってきて、ロウソクに火のついたケーキを目の前に置き、「誕生日、おめでとう」と歌い始める。外では、シビルが1人で車に乗って逃げ出すところ。慌てるマイケル(2枚目の写真)。「ちくしょう!」とケーキを跳ね除け、店から飛び出て必死で車を追うが、惜しいところで突き飛ばされる。食堂に戻ったマイケルは、ケーキ代等を請求され、財布を盗まれたことに気付く。散々だ。シビルの方は、盗んだ財布の中から合言葉を書いた紙を見つけでご満悦。その後、マイケルとジェスがどうやって食堂を出してもらえたかは不明〔2人とも現金の持ち合わせはないはず。あるいは、母がこのことを見越して、ジェスに食事代を渡しておいたのかも〕。しかし、町に着いたのは朝なのに、2人が車を盗んで町を出るのが夜というのも納得できない〔この映画、納得できないことが多すぎる〕。これでシビルとは半日の時間差ができてしまった。マイケルは、手ごろなピックアップを見つけてジェスを乗せ、ボンネットを開けさせる。バッテリーを操作してエンジンをかけようとしたのだが、いち早くジェスが車内でキーを見つけてエンジンをかける(3枚目の写真)。如何にもマイケルが間抜けに見える。
  
  
  

次は、ツイン・フォールズの骨董店のような質屋のシーン。最初にシビルが電話をかけ、合言葉を言い、店主もその気でいる。そこに、マーフィーが直接乗り込んできて、こちらも合い言葉を言う。それを聞いた店主、「いいか、よく聞けよ。さっき、電話でその合言葉を言った女性がいる。もうすぐ 来るはずだ。なのに、何であんたがいる?」。「間違いなくコトを進めるためさ」。マーフィーは、店に置いてあった弓矢を手に取ると、店主に向かって矢を射ち、じわじわと恐怖に追い込んでいく。そして、「俺を騙してないか確かめるから、金庫の中を見せろ」と脅迫する。「なぜ 女が来るのを待てん? 金を見せ合うのは、その時でいい」。マーフィーは、その言葉を無視して、「金庫を開けろ」と暴力的に脅迫する。結局、マーフィーは金庫を開けさせるが(1枚目の写真)、ここでの疑問は、320万ドルもの交換を請け負った「洗浄屋」がこんな小心、かつ、無防備な点。洗浄の手間代で1ドルは70セントになる。2001年のドル円相場の平均は1ドル=120円なので、金庫の中には320万×0.7×120=2.7億円以上の現金が入っているハズだ。護衛の1人ぐらいいても良さそうなものだが… 結局、マーフィーは店主と受付嬢の2人を弓で殺害、金庫の中味を奪った状態で、シビルの来るのを待ち構える。シビルが店に入って行くと、マーフィーが店主のような振りをして応対する。シビルが合言葉を言い、マーフィーがバッグを開けて中味を確認する(2枚目の写真)。その後、2人がどうなったのかは不明。次は、マイケルとジェスが店に到着、マイケルが店に入って行き、誰もいない店内で矢を打ち込まれて死亡している店主と受付嬢を発見する(3枚目の写真)。こっそり付いて来たジェスは、最初、母が殺されたと思って動揺する。そうではないと分かっても、母がいなくなったことは確かなので、車に戻って泣いている。「ママは、見つけてやるぞ、ジェシー」。「嘘だろ。場所だって知らない」。「俺がこれから向かう場所に、行くはずだ」。「ホント(No bullshit)?」(4枚目の写真)。「ホントだ」。
  
  
  
  

マイケルは、ジェスとピックアップで北に向かう。ジェスは、自分のカウボーイ・ハットとお揃いの帽子をマイケルに渡す。「気に入った?」(1枚目の写真)。「最高に気に入った」。2人は、それから車の中でも帽子をかぶっている。マイケルがBODY SHOTのような手巻きタバコを吸っているのを見て、ジェスが真似して火を点ける(2枚目の写真)。「タバコやるとは知らんかったな」。「うん、たまにね」。生意気な真似をやめさせようと、マイケルがタバコを口からもぎとり、「フィルターなんかは女か、俺みたいな中年が使うモンだ。ムショの若い連中はこうするんだ」と言って、フィルターをちぎり取ったものを渡す。試したジェスは、一発で気持ち悪くなり、道路傍に車を停めてもらい吐くことに。「もう1本吸うか?」。「分かったよ(You made your point)」〔つまり、二度と吸わない〕。そして、「ねえ、僕を相棒にしてよ。がっかりさせないから」と頼む。返事がないので、さらに、「マーフィーを捕まえるの手伝ったら、相棒にする?」。「ダメだ」。「何で?」。「口だけで何もできん」。「なら、お利口さん、あんたの車、今どこにある?」。「マーフィーだろ、タバコでゲロゲロ坊や」。「あいつ、盗難車を運転してるんだろ?」(3枚目の写真)。その一言でピンときて、さっそく警察に電話して、車が盗まれたと届け出るマイケル。ジェスは確かに頭がいい。
  
  
  

しかし、マイケルの乗っている車にも、盗難届けが出されていた。電話をかけた直後に、盗難車の運転で逮捕されるマイケル。ジェスは、トイレに行っていて巻き込まれずに済んだ。アイダホ州のボイシ(Boise)の町の警察署の留置所に入れられたマイケル。少し経つと、何と、隣の房にマーフィーが盗難車の運転で収監される。マイケルは、マーフィーからシビルのことで、さんざ嘘を吹き込まれる(1枚目の写真)。彼女がどっちの味方か全く分からなくなる。ジェスは、うまく立ち回り、代理人を立ててマイケルの保釈願いを出す。次が裁判のシーン。代理人は、保釈金を払う条件として、ジェスが「対等な協力関係」と、それに伴う50%の分配を要求しているとマイケルに伝える。50%と聞いて当然拒否するが、1人前に判決を受けた万引きが懲役2年を言い渡されたのを見て〔この州は、刑が重い〕、気を変えてジェスの申し出を受け、保釈される。警察署から出てきたマイケルを、保護者ヅラで迎えるジェス(2枚目の写真)。盗難車置き場に行き、久しぶりに赤いキャデラックと対面したマイケル。トランクを開けるとそこには、猿ぐつわをされたシビルが。そこでは出せないので、そのままトランクを閉める。車に乗ったマイケルが、ジェスに「いいニュースと悪いニュースがある。いいニュースは、ママはトランクだ」と言う。「悪いニュースは?」。「生きてる」。そのまま、ひと気のない所まで行き、トランクからシビルを出してやる(3枚目の写真)。ジェスとは、ネバダ州の食堂で分かれたきりの再開だ。母:「ごめんなさいね」。ジェス:」「死んだかと思ってた」。マーフィーから色々と吹き込まれているので、マイケルのシビルに対する信用度はゼロ。2人の間で口論が始まるが、最後には、シビルに説き伏せられた格好のマイケル。それを見てホットした表情のジェス(4枚目の写真)。マイケルはマーフィーの追撃から逃れるため、キャデラックを捨てて、新しい車(中古かも)を購入する。
  
  
  
  

マーフィーも、偽名がバレる前に保釈されるよう手を打ち、ヒッチハイクで北へ向かう。途中、拾ってくれたのはホッケー狂の男。チームの応援にど派手な車で北に向かう途中だ。一方、カジノ襲撃事件を追う連邦保安官は、首領のマーフィーが、ボイシ署を保釈されたことを知ると、道路に緊急手配をかける。ボイシ北西のオレゴン州との州境(?)での検問を突破するのにマーフィーが使った手は、男を殺して、ホッケー狂の振りをすること。それで難なく厳重な検問を通過することができた(1枚目の写真)。一方のマイケルとシビル。シビルはマイケルにお金をすべて渡し、その代わり一緒に連れて行ってと頼むが、「君が信頼できない。どう頑張ってみても、できないんだ」(2枚目の写真)と断られる。ジェスは、「説得はダメだったんだね?」と言い、さらに、「相棒になれてよかったよ」(3枚目の写真)。「君は、いい相棒だった」。「ホント?」。「ホントだ」。思わず抱きつくジェス。マイケルの中に理想の父親像を見たのであろう。
  
  
  

ホッケー狂から奪った車に乗ったマーフィーは、偶然、反対側から来た車を運転するシビルに気付き、母子の乗った車を追跡。車を体当たりさせ、大破させる(1枚目の写真)。停止した車からシビルを引きずり出し、「俺が欲しいのは 俺の金だ。全額だ! お前に取ってきてもらう」。「マイケルがどこにいるか知らないわ」。「知らんのか? 俺にいい考えがある。お前が奴を見つけてくるまで、このクソガキは預かる」(2枚目の写真)。マーフィーの車に乗せられたジェスは、マイケルの時のように、ふざけようとする。しかし、マーフィーには通じない。悔しまぎれに、「あんたなんか、怖くない」と言ってしまう。「ママの教育がいいんだな?」。「そうさ。あんたのママとは違うからな(What's your mama's excuse)」。頬に一発くらうジェス。あまりの痛さに急に元気がなくなる(3枚目の写真)。ジェスがこんなに生意気になったのは、誰も本気で躾けてこなかったからかも。
  
  
  

シビルは、マイケルのヨットまで行き、ジェスを助けてくれと懇願する。最初は聞き流していたマイケルだったが、シビルの本気度に心を動かされ、遂には、「一緒にジェシーを連れ戻そう」と約束する(1枚目の写真)。「でも、どうやって?」。「こんな場合に、みんながするようにだ。警察を呼ぶ」。もちろん、文字通りではない。警察を取り込んだ、巧妙な罠を仕掛けることにしたのだ。ワシントン州のカナダ国境近くにあるマウントヴァーノン(Mount Vernon)の町の元・製鉄所に立てこもったマーフィーと手下の2人。もちろん人質のジェスもいる(2枚目の写真)。そこに、単身マイケルが乗り込む。マイケルは、ジェスと金との交換を申し出、さらに、シビルが近くで待機しており、自分が5分以内に戻らないと警察に知らせることになっていると脅す〔実際には、もう警察には知らせてあり、大勢の警官が製鉄所を取り囲んでいる〕。マーフィーも折れ、その場で人質とお金の交換に応じる。手下がお金の入ったバッグを持ってマーフィーの方に歩くのと引き換えに、ジェスもマイケルの方に歩く(3枚目の写真)。マイケルが、マーフィーに向かって、「少しでも動いたら…」と言いかけると、ジェスが、以前マイケルが母に言ったことを真似て、「壁にチェリー・パイが飛び散るぞ」と言う。これにはマーフィーも、「びしっと決めれるじゃないか(He's got the lingo down)」と変に感心。こうして交換は無事完了。
  
  
  

マイケルが、「俺は出て行くぞ。金はお前のものだ」と言うと、マーフィーは、「太っ腹だな。だが、そんなに単純じゃない」と言って、手下を入れて3人でマイケルに銃を向ける。マーフィーを睨みつけるジェス(1枚目の写真)。マーフィーは、以前、分配金のことで仲間を殺した時に持ち出した「銃を持ってる者が ルールを決める」と言いかけるが、マイケルは「もし、バッグに金が入ってればな」と機先を制する。その言葉に驚いたマーフィーがバッグを開けると、中に入っていたのは新聞紙の束と、黒いサソリ(2枚目の写真)。サソリに刺されて「チクショウ!」とバッグを蹴ったところで、急にサーチライトが点灯。工場内を走る大勢の人影が見える。マーフィー:「一体、何だ?」。マイケル:「走れ、ジェシー!」。警察:「連邦保安官だ。両手をあげろ!」。不承不承 両手を上げるマーフィー。マーフィー:「5分て言ったろ、マイク」。マイケル:「ああ、嘘だった」。その言葉に切れたマーフィーは、振り返ってマイケルを撃ち、マイケルはのけぞって落下する(3枚目の写真)。
  
  
  

そこからは、3人 対 警官隊の派手な銃撃戦。逆さ吊りになって、回転しながら両手でマシンガンを撃つ場面(1枚目の写真)は、この映画が最初かもしれない。手下2人は射殺されたが、1人残ったマーフィーは屋外の警官隊を狙って強硬な攻撃を続ける(2枚目の写真)。それでも、負傷し、遂には、一斉射撃で血まみれになって死ぬ(3枚目の写真)。
  
  
  

銃撃戦の始まる前、マーフィーに撃たれて落下したマイケルは、前よりも頑丈な防弾チョツキのお陰で再度命拾い。最初から、それがマイケルとシビルの計画だった。マーフィーに撃たれたということで、悪漢扱いされずに救護されたマイケル。シビルは、マイケルの収容された救急車にジェスを呼び入れ、救急車を勝手に運転して現場を去る。途中で車を止め、マイケルの様子をチェック。マイケルは、落下した際に外傷は負ったものの元気。10数箇所の散弾の残る防弾チョッキを見て、「こいつ、すごいじゃないか」「起こしてくれ」。ジェス:「死んだと思ってた」。「死んださ」。そう言って、ニヤリとシビルの顔を見るマイケル。公式に「死んだ」ことになったという意味だ。仲のいい2人を見ながらニッコリジェスが笑う(2枚目の写真)。
  
  

バンクーバー西のジョージア海峡(?)を進むヨット。マイケルとシビルは、仲良くビールを飲み、キスし合っている。ジェスは、おもちゃの二丁拳銃を海に捨てて、自分の過去に別れを告げた(1枚目の写真の矢印)。最後のシーンは睦まじい2人を背に、ヨットの向きをコントロールするジェスの姿(2枚目の写真)。責任ある仕事を任されていると思えばいいのか? 後姿が何となく寂しそうだ…
  
  

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